娘が生後1ヶ月を過ぎた頃からこの記事を書き始め、現在、もうすぐ2ヶ月を迎えようというところ。少し小さく生まれたが、順調に肥え太りポヨポヨと赤ちゃん然としたルックスになってきた。かわいい。
現在も24時間営業での育児は続いているが、その中でもべらぼうにしんどい時期・新生児期を無事に乗り切ったので、振り返ってみたいと思う。
赤ちゃんは天使で悪魔で妖怪
もうマジで「なんじゃこれ!」という感想。
ご承知のとおり新生児はこの世に慣れておらず、睡眠サイクルが未熟でランダムに寝起きし、3時間おきに乳飲むを繰り返し、好きなタイミングで泣き喚いてうんちおしっこを垂れる。夜中だっていつでも本気だ。
そしてすべてがままならぬ存在である。体はグニャングニャン。自力で何もできないし、当然、放っておけばすぐに命の危険が迫りくる。
というわけで24時間営業で育児をすることになるんだが、逐一、子の全力ぶりに翻弄され続ける。「私かわいいでしょ」を免罪符に、親に対して暴虐の限りを尽くしてくる。これを耐え忍び笑顔であやし続けなくてはならない。
3週目頃から大嵐が吹く
3時間おきに寝る・起きると書いたが、出生〜10日目ぐらいまではいい。要は体力がないので、わーっと泣いて起きて、ミルクでお腹いっぱいになるとコテンと寝るのである。素直なものである。実際その当時は「なんて賢い子!」などと夫婦で楽しく話したものである。
しかし「魔の3週目」というのを舐めていた。エグいぐらい泣き喚くやないか。あやして泣き止んで眠っても、ちょっとしたきっかけで不死鳥のように蘇り、ンガァーーー!と1発目からフルボルテージで泣き叫ぶ。そこからずーーーっと、30分とか1時間とかバーサーカーモードで叫び続ける。なんやったの2週目前半までの良い子ぶり。ぶりっこしていたの。何をやっても泣き止まへんし寝ぇへんやないか。
子は後先考えずに全力で親の気力を削りにかかってくるので、ものっすごい消耗する。赤ちゃんは親に抱かれてゆらゆら揺れていると安心するようである。しかしそれでは親も疲れ果てるので、椅子にでも座る。すると揺れセンサーが停止を検出するようで、サボるな!立ち上がれ!さぁ揺らせ!と泣き喚く。
魔の3週目以来、波はあれど基本的にはそんな感じで、この記事の執筆時点でも続いている。ただもう慣れた。
泣き喚き
泣き喚きが本当に上手なのよ。
口の形が。舌を筒状にして音が最も反響する口腔の形をつくってやがんの。ボイトレで教えてもらうやつよそれ。小さい体なのに声が馬鹿でかいの。小さくても超ラウドボイスと言えば、Superflyよ。ボーカルとしては完璧よ。
でもね夜中はマジでやめてほしい。やめてほしいけど赤子には社会通念とかないの。いつでも全力少年なの。スキマスイッチなの?いや、Superflyなの。否、背中スイッチなの(後述)。
ゲップの姿がさながら小妖怪
赤ちゃんは「溢乳」(いつにゅう、It’s new!)といって真顔でなんの予告もなくミルクを口から吐くことがある。ゲポ!とか言ってくれるならいいんだけど、本当に真顔で静かーに吐く。
稀に喉にミルクをつまらせてしまうとかで、これを回避するためにゲップをさせなくてはならない。ミルクを飲んだら縦抱きにしてゲップをさせる。空気とミルクでお腹が張って苦しい表情と、ぼよっとした姿勢がさながら小妖怪のようで、これがはても愛らしい。
うんちおしっこは思ったほど臭くない
あ、糞尿垂れると書きましたがこれについてはあまりストレスないです。新生児のおしっこはほぼ無臭だし、うんちはヨーグルトみたいな匂い。いやまぁうんちの匂いなんだけど。そんなに臭くない。多分、離乳食とか始めたらめちゃくちゃ臭くなる。
あと屁はすげぇ臭い。野菜とか食ってないもんな。
体がグニャグニャ
大事な仕事として「沐浴」(もくよく)がある。赤ちゃん用の風呂にいれることをいう。毎日沐浴する。
生後2週間ぐらいまで、小さく生まれた子は特にだと思うが、体が細くて関節がグニャグニャでとても気を遣う。湯船のなかで赤子を仰向けからうつ伏せにひっくり返す工程があるが、首がグリン!と行ってしまいそうで、親としては神経磨り減るしめちゃくちゃ肩凝る。しばらくすると子が太って掴みやすくなるのもあり、親も慣れる。が最初は大変である。
抱っこも首が座っていないので全て親の力で支えることになる。自力でしゃんとしてくれない。すべてがままならぬ存在である。体重は3kg程度だが、体重のわりに抱っこしていると疲れる。抱っこする側の人間が姿勢をちゃんとしないと肩と腰が死に、腱鞘炎になる。
背中スイッチ
なんだかんだ言ってもPOISONとか聴きながら抱いてあやしていれば、30分もすれば収まって、疲れて入眠することが多い。しかし、これをベッドに置くのが非常に難度が高い作業なのである。いわゆる「背中スイッチ」である。
背中スイッチとは、赤ちゃんが背中に刺激を受けた際にビクッとなって起きてしまう現象である。丸っこい姿勢で温かい腕の中で抱かれていたのが、平たいベッドに移っただけで、大泣きするのである。
そしてこの背中スイッチの感度は非常に良好で、しかも当日は何度トライしても同じ感度なので、何回も何回も寝かしつけに失敗をして、気づけば2時間ぐらい抱っこしっぱなしになっていることがある。そうなってくると腕・肩・腰がバグる。
可能なら、背中スイッチの発動率を大幅に下げる効果のある「抱っこ布団」を使ったほうが良い。こういったアイテムによる育児ハックについては別途記事にしたい。
昨日のハックが通じない
例えば、反町隆史のPOISONが泣き止ませ・寝かしつけに効果があるとされている。我が家でも大変お世話になっている。しかし、これがいつも効果があるとは限らない。
昨日はこれで機嫌が取れたのに今日やってみたら全然泣き止まないみたいなことが多々ある。昨日効かなかったPOISONがまた効果てきめんになったりする。まぁそうだよね、大人でもずっと笑えるネタとかないし、久しぶりに見たらおもしろいネタとかそういのもあるもんね。
にちようチャップリンで言ってたけど錦鯉って若者に全然ウケないんですって。一方で、子どもや30過ぎたぐらいの大人にはめちゃめちゃウケるそうで。いやーわかるわ、確かに中高生〜20代のときだったら笑ってなかったかもしれん。
全然関係ない話してスマンけど何が言いたいかというと子は常に成長するので、ずっと使える鉄板ネタみたいなのって多分ないんだろうな、ということ。とはいえ、なんやかんや反町さんには本当に感謝しています。何の話。
理由も説明されず何が悪いのかわからないまま逆らえない相手に叱責を受け続けるのって超だるいじゃないですか。あれに似た辛さはある。
新生児育児は甲斐なき理不尽
そう、ここまで書いてきたが新生児育児は兎にも角にも理不尽なのである。
新生児は一方的である。片務的に機嫌を取らなくてはならない。こちらの懸命の努力を踏みにじり暴虐の限りを尽くすのである。喚き散らすような鳴き声をとにかくコテンパンなるまで浴びせ続けてくるのである。
社会性のある人間相手なら、こちらからのアクションに対するリアクションがある。社会生活において、リアクションの良し悪しはさておき、キャッチボールが成立するだけでも救いなのである。新生児育児にはそれがない。こちらが投げたボールは5個に増やして明後日の方向へ投げ返すのである。
愛情とは余裕あってこそ
私はあまり些細なことでは動じない精神の持ち主ではあるが、余裕で赤ちゃんに対応できるかといえば全くそうではない。
何をやっても泣き止まないときはイライラもする。イライラは子に伝わるし、それでもっと泣き喚く。疲れ果てて寝てしまうまでその負のループを繰り返すことがある。
果たして我が子に優しき愛情のみで接することができているかといえば、そうではなかったと思う。そんな余裕などない。ハイハイもうええて。もう疲れたて。と思うときは確かにあった。そして子が子であり親が親である以上は、この先二十何年後までは度々あるのだと思う。
もっと言えば、虐待や暴力に走ってしまう人間との違いは、真に孤独にならずにいられるかとか、何があっても他人を傷つけずに自分の機嫌をとる方法を実用化できているかどうかとか、そういうとこだと思う。
子供が被害に遭う事件をもはや冷静には見ていられないほど心が痛むようになってしまったが、一方で、虐待の事件などについて、孤立してしまったのかなぁとか、必要なケアが受けられなかったのかなぁと半ば同情的にも推察できるようになってしまった。
翻って、明日は我が身でもあるし、親が子のための親でありつづけるには心の余裕を保つ必要があるし、そのためにもまず自分や妻を大切にしなきゃいけない。
ごく稀に天使、寝顔はかわいい
新生児期の赤ちゃんはこちらが話しかける、あやすなどしても無反応である。泣くことはあっても笑うことはない。実に甲斐がない。なんとなぁく背中で体で温かさと揺れを検知し、安心の閾値に達したら寝るみたいな、そんな生物である。
ただ、生理的微笑(新生児微笑)という現象がある。顔の反射神経で筋肉を動かしているうちに笑ったような表情になる。これはめちゃくちゃに可愛い。笑い方もいろいろで、穏やかなスマイルのときもあれば、葉巻が似合う映画俳優のようなニヒルなスマイルのときもある。リアクション笑いではないのは分かっているが、救われた気持ちになる瞬間である。
さんざん泣き喚いたあとに、スッと眠ることもある。そしてその笑顔はとても可愛い。
そうやって子の可愛いを見つけながら、摩耗しきった精神をごまかしながら、歯を食いしばってなんとか耐えるのである。
大丈夫、ずっとじゃないから
とまぁ、大変だとか辛いだとか書きまくったんだけど、過ぎてみるとあっという間だったなと思う。嵐みたいなもんである。
なんで大変だとか辛いだとか書きまくったのかというと、みんな大変だとか辛いとか思うんだよ、なのでそう思ってしまうことを罪に思わなくて良いんだよ、とそういう趣旨。赤ちゃんはみーんな悪魔で妖怪。新生児期に母性とか父性とかが沸いてこなくたって気にすることないんだよ、ということ。
あれだけ辛い辛いと言っていた妻も、今や心に余裕ができて母性の塊みたいな感じになっているし、私も日々、内なるラヴの高まりを感じている。
1ヶ月過ぎた頃から、赤ちゃんがリアクション笑いをするようになるんですよ。おでこをなでたりほっぺをぷにぷにしたりしたら、にっこり笑うんです。めっちゃ可愛いので辛かったこと全部吹っ飛ぶぞい。
というわけでこれから新生児育児をするすべての人、私は応援(同情)しています。どうか頑張って。
追記:ケンカしないで新生児育児を乗り切るヒントになればと記事をしたためたので、お時間があればご参照いただきたい。