ノスタルジーが生まれる商店街、松屋町

随筆

2021年の夏と冬に松屋町に訪れた際に書いたブログ、未公開のままだったのだけど、今になって公開しようと思い立った。

大阪市中央区には松屋町(まつやまち、まっちゃまち)という街がある。人形、花火、その他おもちゃを取り扱う卸売の商店街である。

関西人で一定以上の世代の方なら誰もが見たことあるCM「増村!増村!増村!」でおなじみの「人形の増村」をはじめ、雛人形など人形を取り扱うお店が軒を連ねる。

そんな人形屋さんも、季節によってガラリと様子が変わる。夏には花火とか、ビニールプールなど水遊び用のおもちゃが所狭しと並ぶ。冬にはツリーやオーナメント、リースなど、クリスマスを彩るアイテムがお店に並ぶ。

夏の松屋町

夏のある休日。花火がしたいぞ、と夫婦で話していた。そういえば花火ってどこで買うんだろう。花火の専門店ってそもそも存在するんだろうか。ホームセンターやおもちゃ屋さんだろうか。などといろいろ調べていたら、松屋町に行き着いた。

夏はどの人形屋さんも、花火や水遊びグッズを置いている。店によってはフロアの人形を全部片づけて完全に夏仕様となっている。

夏休みに祖父母の家を訪れた家族が、みな一緒に花火を買いに来た、みたいな、そんな客が大勢いた。この後みんなで花火でもして、あくる日にはビニールプールに水を張って遊ぶんだろうか。

祖父母に連れられて何かおもちゃを買ってもらうという経験は、なんともかけがえのない思い出になる。

私の祖父母は孫を甘やかすタイプではないので、例えば家を訪れる度に金品をくれるとかそういうことは決してなく、落ち着きがない子供だった私はとにかくよく叱られていた。

幼心にこれは大変珍しいなと思ったのが、私が多分5歳ぐらいの頃で、祖母がまだ健脚だった頃のこと。祖父母に連れられてどこかのショッピングモール的なところに行き、おもちゃ売り場で、「勇者特急マイトガイン」のロボットのおもちゃを買ってもらった。

元々孫にそう甘くないタイプであることに加え、その後祖母は足を悪くしたので、後にも先にもおもちゃを買ってもらうことはなかったと思う。ということも相まって、「祖父母にどこかに連れて行ってもらっておもちゃを買ってもらう」という経験は、とても特別なこととして記憶に焼き付いている。

皆さんも、何かそんな、幼い頃の家族との思い出があったりするのではないだろうか。

松屋町のお店で見た光景がまさにそんな感じ。家族でお店にやってきて、興奮しながら店内をウロチョロし、「3つだけやからね!」なんて言われながら、視界いっぱいに陳列された花火のなかから、一番イケてる「オレの花火」を選ぶ。そんな子供たちが沢山いたのである。そんな感じだろう。

祖父母の家に戻り、花火はまだかと駄々をこね暴れまわる。親が叔父さんとなんかよくわからない世間話をしているから、面白くない。隣の部屋で従兄と折り紙を折る。そんな感じだろう。

夕ご飯時、大家族でバラエティ番組かドラえもんが映るテレビを囲んで「縄跳びできるようになってん!」「へぇーすごいやん!」みたいな話をし、食べきれない量のごはんに食らいつく。もう要らないと言っても問答無用で次から次へと飯が出てくる。きっとそうだ。

夜、近所の河原にぞろぞろと向かい、テンションは最高潮に。ネズミ花火をまき散らすとかいう悪ガキの遊びをいとこから学び、半分ぐらいは親に怒られて過ごす。帰る頃には疲れ切って、誰か大人におぶさって目をこすりながら帰る。そうな感じだろうて!

そんな経験を今まさにしている子供たち。大人になってから、どうしようもない懐かしさと共に思い出すことになるんだろうよ。

冬の松屋町

日常を面白がって生きる私たち夫婦、今度はクリスマスツリーを買おうよということになった。ネットでいろいろ探してみるんだけどどれがいいんだかよくわからない。なんかいろいろ調べていたら、またしても松屋町にたどり着いた。

規模は夏ほどではないけれど、ツリーをはじめとするクリスマスアイテムがたくさんお店に並んでいる。

「クリスマスツリーのオーナメント、どれが好きだった?」と妻。そういえば子供の頃、クリスマスツリーに飾りをつけるのをワーキャー言いながらやったな。

私は綿雲を飾り付けるのが好きだった。ツリーの枝に乗っけるように巻き付けて、降り積もった雪に見立てるのだ。

気立てのいい店員さんのお店で、小さめのすてきなツリーを買った。

オーナメントは100均でもなんでもいいのさ。好きなものを飾ればいいのさ。ザッツ、クリスマス。

時は流れて子が生まれ

ここからは最近の加筆である。

ツリーが我が家にある。子と犬がいて、家族写真を撮っている。これは去年の。今年の写真も撮らなきゃね。

このツリーはあと何年使うことになるだろうか。長持ちするかもしれないし、娘が早々にませてしまうかもしれないし、イタズラとかで早めにおしゃかになるかもしれない。

それでも、あーこんなツリーあったよね、と大人になってから思い出してくれたらそれでいい。あれね、お母さんと若い頃に松屋町で買ってきたんよ、とか言いたい。

ということで、いろんな人のノスタルジーを作ってきたんだろうなぁ、そんな松屋町の話。

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